相続Q&A

相続相談事例

遺産を実際に分配する方法は、どんなものですか?

大きく3つの方法があります

遺産を実際に分配する方法には、大きく分けて、現物分割、換価分割、代価分割の3つの方法があります。
現物分割が原則ですが、相続人の意向や、相続財産の性質によっては、換価分割となる場合が多いでしょう。ただし、代価分割は、相続人に過度の負担が生じたり、争いの元となりますので、注意が必要です。

 

遺産分割の具体的な方法
現物分割(原則) 遺産の一つ一つを現物で分配する方法です。
例:着物、宝石、電化製品など
換価分割(代価分割) 分配を現物分割でしてしまうと価値が下がる、相続人全員が使用しないなどの理由で、金銭その他の経済的利益に換価して分配する方法です。
例:あまり広くない土地、誰も使用しなくなった実家など
代償分割(価格賠償)

現に利用していたり、現物・換価分割によることが後々に問題を起こす遺産がある場合、相続人の一人に相続分を超える遺産を現物で相続させ、他の相続人にはその遺産の価格分を支払う方法です。
例:現在も居住する実家、農地その他事業用地などの不動産、経営する会社の自社株など。森林について現物分割と共にする調整としての代償分割につき最高裁昭和59年4月25日判決参照。

ただし、支払う相続人には、過度の負担がかかる場合も多く、その負担額には配慮が必要です。税理士などの専門家とともに、綿密な話し合いと合意が必要と考えます。

代償分割が認められる判例による基準
(1)遺産が細分化を不適当とすること
(2)共同相続人間に代償金支払の方法によることの争いがないこと
(3)遺産の評価がおおむね共同相続人の間で一致していること
(4)遺産を取得する相続人に債務の支払能力があること

しかし、実際には、問題となる遺産を現物分割することは、現在の利用状況や持分、その他の総合的な事情によっては極めて困難で、尚且つ、特定の相続人に相続させるのが一番良いにも関わらず、分割が話し合いでは全く進まないという状態が少なくありません。

①既に共有が確定している場合には、訴訟により、共有物分割請求(民法257条・258条)を行い、共有者一部が他の共有者持分をいわば強制的に買い取り、特定の共有権者(相続人)に当該相続財産の全てを単独所有または共有にする全面的価格賠償の方法による分割(最高裁平成8年10月31日判決)も、最高裁判例によって認められています。

※全面的価格賠償が認められる判例による要件
(全面的価格賠償が許される特段の事情)
(1)当該共有物を共有者のうちの特定の者に取得させるのが相当であること
(2)その価格が適正に評価されること
(3)当該共有物を取得する者に支払能力があること
(4)他の共有者にはその持分の価格を取得させても共有者間の実質的公平を害しないこと
等です。

全面的価格賠償による分割を訴訟で求めた場合、裁判所は、全面的価格賠償が許される特段の事情の存否が認められるかどうかについて、裁判所は必ず確認しなければなりません(最高裁平成10年2月27日判決参照)。

なお、訴訟で価格賠償と持分移転登記請求を同時に行うことができます。(最高裁平成11年4月22日判決参照)。

②未だ遺産分割協議が整わない状態での共有関係の場合、遺産分割調停もしくは審判の中で、価格賠償を話し合うケースもあります。

(※、なお、具体的な事例については、相続相談事例集「相続と訴訟その②~遺言書と共有物分割請求」参照。)